大阪発の注染手ぬぐい専門店「にじゆら」の工場見学に行ってきました

スポンサーリンク

私がお出かけする時の必需品の一つが「手ぬぐい」です。本当に手ぬぐいって便利!!吸水性がいいし、大きいので多少の事じゃびしょびしょにならないし、最近は可愛いデザインのものがいっぱるあるし、色落ちするのもまた味で、端のほつれもまたいい。

P2160490

そんな手ぬぐいを昔から作っている大阪の手ぬぐい専門店「にじゆら」の工場見学に行ってきました。場所は堺市、株式会社ナカニの工場です。

(※レポートは非常に長いです…)

ちょうどこの時、目眩がしていた時期だったのですが、頭を動かさなければまだまし、という状況だったので公共交通機関だと不安があり、車で堺まで向かいました。

一応、地図はいただいていてgoogle mapも使ったのですが、場所がわからず10分ぐらい周囲をウロウロする羽目に…。こんな細い道でいいの?!というところを入っていくとようやく建物を発見。

中に入れていただいて、二階の会議室のようなところに入ると既に8名ぐらい参加者がいらっしゃいました。

全員そろったところで、ナカニの社長からご挨拶、そしてナカニのデザイナーさんからにじゆらブランドの始まりについてお話がスタート。

***

にじゆらの最初の頃、スタッフも少なくてアートディレクターの知り合いとかにデザインを頼んだりもしていたそうです。そのうち大きくなってくると、使ってもらえませんか?と声をかけてもらえるようにもなり、最近は企画として出来るようにもなって、スタッフがおすすめの作家を提案(プレゼン)をするという形をとって、それで決定した最初の作家さんが、矢島操さんでした。

P2150390

矢島さんは陶芸の作家さんなのでどんなものができるのか未知数でしたが、最終的には「楽園」という手ぬぐいが完成しました。(企画展で販売されました)暮らしに彩りを与える作品、それが手ぬぐいと近いものがある、と思って矢島さんを選んだとデザイナーの方が説明したところで、矢島さんの紹介がありました。

ちなみに矢島さんは滋賀県大津市の方だそう!ちょっと親近感を勝手に持ってしまいました(笑)

突然「手ぬぐいをつくりませんか」という電話があり、当初は「どうして私を?」ととまどいが隠せなかった矢島さん。

けれど、手ぬぐいは生活に密着していて個人的にも好きだったこと、そして熱意が伝わってきたことからコラボがスタート。注染(ちゅうせん)はすべて手作りで職人の手仕事、自分のやってきた「かきおとし」という技法でやってみよう、と思ったそうです。

かきおとし、とは陶板に刷毛で茶色を塗って、それを焼くと黒色になり、それを掘っていくという技法です。木版画のようにあえて削り残しを残すみたいにして、下書きはせず線の勢いを残すようにしているとのこと。

それを写真にとり、そこから手ぬぐいの型を作って出来たのがこの「楽園」です。

P2150391

最初はモノクロにしたいと思っていたけれど、工場にきてぼかしの技法、にじみをいかしたい、と思いこれ(一番左の手ぬぐい)になったんだとか。一つの型だけれど、土手を作って色分けができる。ちなみに限定色は職人さんのおまかせで作った手ぬぐい。藍色のは、矢島さんと職人さんで見本染めをしつつ作ったそうです。

どれも美しい。

ナカニの社長いわく「商品というより作品だなと思った」。

ちなみに、にじゆらはレクサスとのコラボ手ぬぐいも作ったことがあるそう。デザインにはこだわりたい、と強くおっしゃっていました。

工場見学スタート

そしてここからいよいよ工場見学がスタート。

ロール捺染

P2150392

まずはロール捺染です。5色まで可能。

P2150395

こちらは社長。樹脂系の糊に色を混ぜているそうで、ドクターという刃で不要なところをとって、色をのせていくんだそう。

P2150396

片面から色をのせます。注染の場合付加価値があるが、高すぎるので安価に作れる農家の手ぬぐいのようなものはこれで作るんだとか。

P2150398

こうしてローラーで運んでいる間に強く熱をあてて乾燥させています。

クレア染め

P2150402

手ぬぐいは白の生地を使います。なので、無地一色に染めることをクレア染というそう。

半オート

P2150403

生地をカットしたものを置いて、染めるのは自動でできる器械です。

P2150407

これが型。型を上の写真の器械にセットすると、下の台が動きます。樹脂でといたものをスクイザーで伸ばすのですが、ではここで色がつくのはどの部分でしょう?

答えは網のところ(黒い部分)に色がつきます。白いところは樹脂で覆われるからえす。注染は逆になります。

注染(ちゅうせん)

そしていよいよ注染。注染とは、伝統的な手法で染め上げる技法のこと。

にじゆらのカタログによると

その名のとおり、染料を注ぎ、染めていきます。20数メートルある一枚の布を蛇腹状に重ね合わせて一度に25枚の手ぬぐいを染めることができます。
表からと裏からの二度染めることで、ウラオモテなくきれいに染まるのが一つの特徴。

また、注染には多くの工程があり一つ一つの作業を職人が手作業で行うので一つとして同じものは存在しません。職人の手作業だからこそ表現できる繊細でやさしいぼかしや、にじみのなんとも言えない風合いが注染の一番の魅力といえます。

そうなんですよね。私も注染の手ぬぐいが大好き。裏も表も綺麗に染まっている手ぬぐいは使っていて嬉しい。

P2150408

工場は砂でいっぱい。

P2150413

昔はおがくずを使っていたそうですが、今はどこも砂なんだそう。他の反物や台に不要な糊がくっつかないようにしてあるんだそう。最終的に水洗いするので、この砂はほぼとれます。

1.糊置き(板場)

P2150410

職人さん。

P2150415

糊置き(板場)では、手ぬぐい一枚分の布をのりづけ台の上に敷いて、木枠をかぶせ、型紙を固定。その上から防染糊をキベラでむらなくこすりつけます。(糊がつけられた部分には、染料が染み込みません)

なので、この場合だと紋と文字部分は、後で白く出てくる、ということになります。手ぬぐい25枚分のロール状に巻かれた布を蛇腹状に重ねつつ作業を繰り返します。

2.注染(壷人(つぼんど))

P2150418

いよいよ注染です。

必要のない部分に染料が流れないように糊で土手を作って、そこにドヒンと呼ばれるジョウロで染料を注いでいきます。

一度にいろんな色を染められるのが注染のいいところ!

P2150423

均等に浸透させるために、台の下にあるペダル(ピアノのペダルみたいな)をふんで、減圧タンクで吸引しつつ注いでいくようです。時々シュコー!シュコー!という音が聞こえます。

注染は短時間で染めていて、10枚以上厚みがあると染まらないので裏返してもう一度染めるそうです。

もうこれは本当に職人さんの技術だなぁと感心しきり。

P2150424

これが矢島さんの「楽園」の生地!!

P2150425

糊がしっかりとへたら無いように砂をまぶしている様子。

P2150430

水洗い(川)

検品まではつながったままの反物の状態。

P2150428

川と呼ばれる洗い場で防染糊や余分な染料を洗い流します。

P2150431

寒い時期はつらそう!!

P2150434

こちらが乾燥室へと向かう途中にあった型紙です。

P2150436

注染をする時はあて布をします。注染のてぬぐいを染める時に汚れから守る布で、何度も洗っては次の手ぬぐいに重ねられるので不思議な色の重なりがあります。

乾燥(伊達)

P2150442

最後は脱水機にかけてすぐに乾燥させます。

P2150446

昔は天日干しをしていたそうですが、今は天日状態を作った乾燥室で乾燥させており、触ってもいいですよ、と言われたので少し触って匂いを嗅いでみたら、糊の匂いがしました。

色とりどりの手ぬぐいが乾燥機からの風でゆらめく様子はとても綺麗でした。

検品

P2150448

最後は検品が行われ、そこから先は外部の業者にお願いするそうです。

見学後の説明

ドヒン

P2150451

これが染料をそそぐ時に使われているドヒン。実は関西は先が曲がっていて、関東は先がまっすぐという違いがあります。

注染は関西で始まったのですが、曲がっているのはスピードアップのためだそう。関東は二人同時に染める時、長い方がよく、関西より染台が広かったため、そんな違いが出来たんだとか。

ちなみに全国で注染の職人は60名、その中の1/10以上がにじゆらの工場にいるそうです。

木ベラ

P2150452

糊をつける時、厚くつけすぎると柄がつぶれてしまい、薄すぎると糊が薄くなってしまうので、おさえこんでつけるから木製の木べらがこんなにもへこむらしい。すごい!!

いろんなデザイン

P2150453

最後に難しかった染の手ぬぐいをいくつか紹介してくださいました。これは、実は馬部分はクリーム色で、クレア染(無地染)をして乾燥させてからもう一回同じ工程を繰り返しています。
なので糊置きの5倍ぐらい手間はかかっているそう。

全工程を二回以上くりかえすものを「細川染」と呼びます。ピアノの柄も非常に難しかったらしいです。

P2150455

そしてこれが「注染ではありえないチェック柄」と社長が苦笑いしていた手ぬぐいです。(笑)職人さんからも「デザイナー出ていけ!」と怒られたと笑っておられました。社長の横にいるのがデザイナーの方です^^;

P2150456

ヨコ線の型と、たて線の型二枚で染めています。

チェックの場合、耳(端っこ)部分もきちんと染めないといけないのだけれど、両方の耳ともしないといけなくて、のりを足らすのも難しくすごく大変だったそう。

P2150458

あとこれもありえないぐらい難しかったそうです。後ろに持っておられる花の柄のも!!そうでしょうねぇ…土手何個作ったんだろう…裏も表もあわさないといけないですし。

そういう目で注染という手ぬぐいを見ると、非常に手間がかかっていて職人さんの技術力の高さに改めて感心しました。

ちなみに型紙ですが、伊勢の手掘りの型紙とCADの型紙の二つを使っているんだとか。紙にシールを貼って、カッティングマシンに入れて下の紙だけカットし網に貼れば型の完成。

後は質疑応答で、あて布が素晴らしかったのであれを販売するとかは無いのでしょうか?という質問には、キャラクターやブランドがあって版権がからんでくるので、難しいとのこと。ただ、一度すべての版権をクリアにして、限定販売で2万円ぐらいで出したそうです。

手ぬぐいは40cm小幅ですが、にじゆらブランドで「たしたん」という広幅のも今は作っているらしく、そうすると生地の選択肢が非常に増えます。4月にミラノで発表するらしく、今は1年ぐらいテストを繰り返している最中だとおっしゃっていました。

カーテンとか衣装とか色々できることが増えますね!

大体2時間ぐらいだったのですが、非常に興味深い工場見学でした。写真もどんどん撮って、facebookとかブログにもじゃんじゃん上げてください、とおっしゃっくださって良かったです(笑)社長がとても気さくで職人思い、いや社員思いなのが伝わってきて、いい会社だなぁと思いました。また中崎町のお店にも行ってみたい。

ありがとうございました。

あ、長くなったのでいただいた工場見学ノベルティについては次の記事で。

スポンサーリンク
この記事をお届けした
sorariumの最新ニュース情報を、
いいねしてチェックしよう!

シェアする