昨日、いよいよ北京オリンピックが開催されましたが、開会式は皆さんご覧になられましたか?私は、初めてオリンピックの開会式を最初から最後までちゃんと見ました。
というのも、今回の演出が映画監督「チャン・イーモウ」と聞いていたので、どういう風に見せるんだろうなぁと興味があったことと、中国という国が自国開催のオリンピックという舞台を世界にどうアピールするのかと思って、ぼんやりと見てました。
2008人の青年たちが、同じ衣装を着て整然と並び、一糸乱れぬ太鼓を披露しつつ、孔子の言葉を繰り返す場面が一番印象に残りました。オリンピックの開催国、ホストとしてふさわしい出迎えの言葉ですよね。
「朋あり遠方より来る、亦楽しからずや」
友人がいて、遠路はるばる訪ねてきてくれる。なんと嬉しいことではないか。
あのカウントダウン数字も、実際にパネルでやってるんじゃなくて、人がやってるところが、なんともよかったです。格好よかった。若干、最後は飽きてきましたけど。(笑)
それはともかく、この開会式が行われたのはメインスタジアム「北京国家体育場」、通称「鳥の巣」(Bird’s Nest)でした。
「鳥の巣」の設計者
この「鳥の巣」は、スイスの世界的建築家ユニット、ヘルツォーク&ド・ムーロンが手がけたもの。鉄骨を複雑に組み上げて、まるで鳥の巣のように見せています。(そのせいで、維持費がおそろしくかかるそうですが)
彼らは、2001年に建築界のノーベル賞とも言われる「プリツカー賞」を受賞しています。彼らを一躍有名にした建築といえば、ロンドンの現代美術館「テート・モダン」でした。その後、青山の「プラダ・ブティック青山」で日本建築学会賞も受賞しています。
彼らの特徴は、どうやら建物表面にあるようです。
建物表面を無数の石で覆ったり、金属の表面に切れ目を入れてねじるなど見え方を工夫したり、ガラス面にさまざまな時代の写真や絵画をプリントしたりと、建築の表層の部分での試行を重ねて日々刻々異なる表情を建築や周辺一帯に与え、注目を浴びた。
ただ、2000年以降は、むしろ建物表面に構造を見せる形(プラダしかり、鳥の巣しかり)に変化しつつあるようですね。
表層に対するこだわりや物質性の優先は変わっていないが、簡素な箱型の造形から、これまで中に隠れていた建物を支える柱などの構造が複雑化し外部に現れ、表層をプリズムのように一様に覆ってしまうようになった。
プラダ青山店では建物表面をガラスが覆い蜜蜂の巣のような内部構造が透けて見え、北京オリンピックスタジアムでは籐を編んだような複雑な柱が建物を一面に覆っているが、表層の印象によって巨大なボリュームによる圧迫感はやわらげられている。
そして、この中国の国家プロジェクトでもある「鳥の巣」が出来るまでを追ったドキュメンタリー映画が、8/2に公開されました。
ドキュメンタリー映画「鳥の巣」
これはちょっと見逃せないですね!!!以前、この設計事務所で働いていた建築家の方が、この「鳥の巣」プロジェクトの最初のエピソードを語っています。
解説/映画「鳥の巣」とヘルツォーク&ド・ムーロン by 菊地宏
この鳥の巣のイメージを始めてみたのは、ヘルツォーク&ド・ムーロンのスタッフとしてプラダブティックの工事現場に張り付いていたときだった。
一人のスタッフがスイスから送られてきたコンペのイメージを見せてくれた。
「どう?このデザイン。好き?」と聞くので、「すごく大変そうだよね。」と他人事のように返事をすると、
「で、好きなのかどうか聞いているのさ。」というので、
「うん。正直わからない。ただ、十分クレージーだから、いいんじゃないかな。担当者はきっと大変だろうけど。(笑)」と。
こんな風に答えていたそうですが、結局「手伝ってくれ!」と言われて外殻設計は彼が手がけたのだそう。
ニイハオ!北京:日本人建築家、鳥の巣設計に参加 「中国人の底力が完成させた」 – 毎日jp(毎日新聞)
「担当者は大変だろうな」。人ごとのように思っていたが、「手助けしてくれ」と頼まれ、外殻の設計を引き受けた。特殊なコンピューターソフトを駆使し、04年初旬から約3カ月かけて作業を進めた。3、4人が担当を断るほど難しい仕事だった。
また、この映画はかなり長い時間をかけて撮影されたらしく、その間、やはり中国が国の威信をかけて創り上げていたプロジェクトということもあり苦労もあったようです。
監督インタビュー/スタッフ/映画【鳥の巣 -北京のヘルツォーク&ド・ムーロン-】
―中国側からの規制は沢山あったのですか?
もちろんオリンピックスタジアムは中国人にとって非常に重要なものです。そして国際的にも大きな関心を寄せられています。建設現場では、実にたくさんのチェックがありました。撮影許可を取るのは時を追うごとに難しくなりました。
しかし次第に、入り口の守衛の裏をかく方法と手段を見つけたのです。我々は常に、中国人男性を二人連れて行きました。我々の“耐官僚”係であるプロダクションマネージャー、イン・リーそして外務省の若い男性です。どちらも禁止事項に対処する手腕にとても長けていて助かりました。中国では、最初の返答は決まって「No」なのです。そこで交渉が必要となりますが、結果はしばしば前向きに転ずるのです。
”耐官僚”係(笑)
そんな困難をのりこえて撮影されたこの映画。建築を勉強している学生や、建築業に従事している人だと割引もあるという「建割」もあるようです。あと「鳥の巣」建築データや、元ヘルツォーク&ド・ムーロンの事務所で働いていた建築家・菊地氏のメッセージも掲載されているパンフレットもお忘れ無く。
すでに東京や岡山では公開していますが、京都は8月23日(土)から、「京都みなみ会館」で公開。忘れずに行くつもりです。
映画【鳥の巣 -北京のヘルツォーク&ド・ムーロン-】 公式サイト