連休の間に、京都は大山崎町にあるアサヒビールが所有している「アサヒビール大山崎山荘美術館」 に行ってきた。
2003年11月号の「装苑」の特集「京阪神 三都物語」で、この山荘が紹介されていたのだけれど、その頃からずっと行きたいと思っていた場所。
大正から昭和初期にかけて、関西の実業家・加賀正太郎が蘭を栽培するために別荘として建てたもので、オーナー自身が設計し、イギリスのチューダー様式をもとに造られている。天王山のふもとにあり、周囲は豊かな緑が広がっていて、静けさが心地よい。何より、私の興味をひいたのは、この山荘が建築家・安藤忠雄によって修復がおこなわれた、ということと、修復と同時に、本館に併設する形で地下の美術館「地中の宝石箱」を造った、という事実。
人が少なかろう、という理由もあったけれど、何はともあれ、JRで京都と大阪の分かれ目「山崎駅」に降り立った。
かなり急勾配な坂をひたすら上っていく。
10分ほど歩くと、トンネルが。この道はバスなど通っておらず、美術館には専用駐車場もないのでご注意を。ただし、専用バスが一応出ているらしい。タクシーもこのトンネルの手前までは送ってもらえる。ただ、坂道はかなり急で、ちょっとしんどいけれど、森林の中は心地よいし、気分も盛り上がってくるので歩くほうがおすすめ。
トンネル上部に「大山崎山荘」のプレートが。
この日は、少し暑いぐらいの気温で、木漏れ日がアスファルトに落ちる。
↓表門に到着。昭和初期に建てられただけあって、随分と古めかしい街灯が。
表門をくぐったところにあった池の近くに咲いていた菖蒲の花。私はこんな風にくっきりとした緑の葉に落ちる黒い影がすごく好きで。
残念ながら、本館、美術館の内部は撮影禁止。二階の喫茶室はテラスとつながっていたので、しばしお茶を楽しむ。
内部には、年月を経てみがかれたゆるやかなカーヴを描く木の手すり、一階から二階へと誘う階段は吹き抜けで、大きなステンドグラスがはめこんであり、きらきらと色とりどりの光が内部に射し込む。ヴェロア生地のカーテン、重厚なシャンデリアやランプなどが、格調高さを感じさせる。
当時使用されていたと思われるバスルームなども、見ることが出来る。
外観は、前述したようにイギリスの「チューダー様式」をもとにしている。チューダー様式の特徴としては、切り妻屋根(=二面で構成されるような屋根の形。「人」 ←こんなの)、そして、下の写真にはっきりと見てとれるけれど、構造部分(柱や梁の部分)を外部に現(あらわ)し、意匠としてあえて出しているところ、らしい。
私もこれをチューダー様式、というのは初めて知った。なるほどね。
二階テラスから眺める天王山の風景。紅葉の時期は見事だろう。
↓中央下にいるのは二匹の羊。出来ればここにも行ってみたかったのだけれど、あいにくこの場所は立ち入り禁止のようだった。Les nouveau moutons 新しい羊たち 雄羊と雌羊 フランソワーグザビエ・ラランヌの1994年の作品。
↓右手に見えるのは温室
↓中庭から山荘をのぞむ。
↓なんだかよくわからない、変なウサギのオブジェも中庭にある。
↓苔生す樹木。
今でも十分住めそうなぐらいに美しく修復しつつも、よい具合に古びていたり、しっくりと馴染んでいる照明や、暖炉、箪笥、あるいは建具が残されていて、とても心地よい山荘でした。建物だけではなく、この天王山の周囲の風景も含めてね。ゴールデンウィーク中だったので、それなりに人が多かったのだけれど、普通の休日に行くと、もう少しゆっくりじっくりと見られていいかもしれない。
ということで、後半はいよいよ安藤忠雄が建てた「新館編」です。
アサヒビール大山崎山荘美術館
住所/〒618-0071 京都府乙訓郡大山崎町字大山崎小字銭原5-3
TEL/075-957-3123(総合案内)
FAX/075-957-3126
開館時間/午前10時~午後5時
休館日/月曜日