今日の朝、POLAR BEAR BLOG: 「有料コンテンツ+広告なし」は可能かをちょっと読んでいたら、ある雑誌のことを連想したので、今日はその話をします。
POLAR BEAR BLOG: 「有料コンテンツ+広告なし」は可能か
ウェブ上でのコンテンツにも料金を設定して、広告を一切出さずに運営している雑誌があります。その秘密について考察しているのが以下の記事:■ Success without ads (CNET News.com)
「広告を一切出さない」という点でピンときた方もいらっしゃるかもしれませんが、その雑誌とは「Consumer Reports (コンシューマー・レポート)」のこと。米国の消費者団体 Consumers Union (コンシューマーズ・ユニオン)が発行する雑誌で、日常品から車まで、企業が販売している様々な製品を独自にテスト・報告するという内容。調査の独立性と公平性を維持するため、誌面には広告を一切載せず、テストに使用する製品もすべてお金を出して購入(企業から送られてきた場合には送り返す)という方針を貫いています。
このコンシューマー・レポートは以前TVでとりあげられてました。車だったら、新車を購入してそれを解体(!)、徹底的に調査をしてレポートをだすその仕事ぶりに感心しつつ、でも車なんて安全性を特に問われるものであれば雑誌の広告なんだか記事なんだかよくわからないものを鵜呑みにするのは怖いから有料でもこのレポートなら欲しいわ、と思った記憶があります。
この記事では、最終的にコンシューマーレポートが間違ったレポートを出した時の対応のすばらしさや、それゆえにユーザーからの信頼を得ることができ、だからこそこの「無料コンテンツ+広告」時代において、「有料コンテンツ」であっても人々は求める、というようなことが書かれています。
これはWebでの話だったんですが、今現在発行されている雑誌や新聞も「広告」を出してもらうことで発行し続けられているという現実があり、記事のように見せかけた広告が反乱してますよね。ひどい雑誌になると、ほとんど特定のメーカーの商品でその記事が埋められていることも。(女性雑誌のメイク特集を見るとよくわかる…)
そんな雑誌の中で、広告を一切載せないことで信頼性をかちとってる雑誌があって、私が現状知っている限りでは「暮らしの手帖」という雑誌です。
「暮らしの手帖」の特徴は、「広告を載せない」「商品テスト」がある、の2点。「暮らしの手帖」の元編集長・花森安治氏(ちなみにこの手書きのようなロゴも彼の作品)の方針で決まり、発行から半世紀たった今も広告を載せていません。
暮しの手帖社 | 会社案内
その後、経済成長とともに物が出回り始めると、どれが役に立つ商品か、また本当に良いものをメーカーに製造してもらうためにも、商品テストを実施。消費者の立場に立った実証主義のテストは高く評価され、多くの読者の支持を得ました。おかげさまで、創業から半世紀以上がたちました。広告を載せていない『暮しの手帖』は、一冊一冊をお買い上げくださったみなさまのおかげで、今日まで続いてまいりました。これからも毎日の暮らしに少しでも役に立ち、親から子へと読みつがれていく、そんな雑誌でありたいと思います。
ただの商品比較なら、いろんな雑誌がこぞってやってますが、人々が「暮らしの手帖社」を選ぶ理由の一つはやはり「広告がない」というそのポリシーゆえなのかもしれません。だからこそ、創業から半世紀以上この雑誌は続いてきたのだろうと思います。2、3年前に編集長がかわり、松浦弥太郎氏(元・移動書店m&co.traveling booksellersをしておられました)が編集長になられ「商品テスト」が復活。(しばらくされていなかった) サイトにも広告は一切掲載されてません。(といってもそれほどコンテンツがあるわけではないので) 今後も廃刊せず続けていってもらいたい雑誌の一つです。
あともう一つ。「本の雑誌」の方も、書評雑誌だから、と他社の本の広告は載せていなかったはず。
第3回 椎名誠『新宿熱風どかどか団』-カルチャー:日経WOMAN
『本の雑誌』は5年目に入り、部数も増え続けていた。ある時編集長椎名誠は、交換広告は可だが、他社の本の有料広告は遠慮するとの法律(!)を作る。「わずかな金でキンタマを握られていては面白くない」との理由からだった。
一切広告はのせない、という「暮らしの手帖社」とはちょっと違う手法ですが、編集長が椎名さんなんで。(笑)この本の雑誌社の面白いところは、もう言いたい放題の書評やランキング。例えば
・嫌キャラ王決定戦
なんてあって、これは2004年の号なんですが、年に一度の「最強」シリーズということで、「嫌なキャラ」をジャンルを問わず選び、トーナメント制にして推薦した人がそのキャラの嫌さを語るという、書評を兼ねた(?)変なランキング決定戦が開催されました。もちろん、一冊一冊の書評もあり、読者アンケートの「推薦図書」ものってるし、なんというか、ノリがすごい。 でもそこには他社の広告は一切のせておらず、2004年1月号には、自社の広告しかのってませんでした。(笑)だからといって、自社の本ばっかり推薦する雑誌じゃない、そのバランスのすごさ。
とはいえ、サイトを見ると他の出版社の広告がのってるので、今はどうかわかりません。最近 は「本の雑誌」を買っていないので。
ともかく、広告を排除しているからこそ、信頼性が生まれるのでしょう。 暮らしの手帖しかり、 本の雑誌しかり。ただ、雑誌の場合は、Webと違い発行し書店に流通させるまでに多額の金額がかかるゆえになかなか難しいでしょうが、だからこそ、なくなってほしくはないものですね。