京都国立近代美術館レポート第三部は、いよいよ「ドイツ・ポスター 1890-1933 PLAKATE」について。第一部と第二部は以下の記事をご覧ください。
sorarium – 建築家・槇文彦の作品「京都国立近代美術館」(岡崎)
sorarium – 「cafe de 505」(京都国立近代美術館内)の京漬物ピラフ(岡崎)
まずは、ポスター、そして看板ですが、この背景色が墨でフォントが若草色、もしくは橙色というのはなんとなくドイツっぽいな、と思いますね。色合いからくるイメージとして。なんでだろう。ストリクトな印象を受けるからかもしれない。
こちらは、京阪東山駅から近代美術館へと歩く途中のあるお店のショウケースの下部分に貼ってあったポスター。
↓ この看板の向こう側は琵琶湖疎水。近代美術館の敷地内にあります。このイラストはとても不気味だよね。
↓ そしてこちらはチケットを購入してすぐに入る入り口の看板。
フライヤーとチケット。フライヤーに関しては私が手に入れたのはこちらの目がオレンジ色のものだったんですけれど、Mucha-holic / ミュシャ中毒 ドイツ・ポスター1890–1933ではピンク版の写真も載せられているので、もしかしたら複数版があるのかもしれません。
展示構成は以下の通り。受付で折りたたまれた紙を渡され、そこに作品の解説が書いてある(普通は作品の横にキャプションがついていることが多い)。裏にはこの墨一色で印刷されたこの「目」の作品が印刷されていて、ポスターとして部屋に飾ることも可能だけど…これを部屋に貼っておくとなんだか誤解を生みそう。「21世紀少年」の「友達…?」なんて。
ドイツ・ポスター 1890-1933 PLAKATE – maaolaの旅日記
○展示構成
第Ⅰ章 ドイツ近代ポスターの先駆者たち 1890-1900年
第Ⅱ章 ドイツ近代ポスターの黄金時代 1900-1914年
第Ⅲ章 第一次世界大戦中のポスター芸術 1914-1918年
1.ドイツ諸都市に開花したポスター芸術
2.ミュンヘン-ポスター芸術先進の地
3.ベルリン-ポスター芸術のメトロポール
4.ハンス・ザックスとポスター愛好家協会
第Ⅳ章 ポスター芸術の新潮流 1918-1933年
1.政治的ポスター
2.黄金の20年代-新しいライフスタイル
3.新たな造形言語の獲得
第Ⅴ章 日本にみるドイツ近代ポスター、その受容と展開
1.「六人組」、ドイツ商業美術の紹介
2.七人社と『アフィッシュ』
3.カルピス国際懸賞
1890-1900年、ドイツでポスターが作られはじめた当初は、今のような商業的なものではなく、宗教、神話をモチーフにしたものがほとんど。ぱっと見て、絵画的だな、とまず感じました。というのも、この頃のポスター制作というのは、画家が作ることや印刷職人が作ることが多かったらしく、枠などにも装飾が施されており、ほとんど絵画に近い。そこに出てくる人物も、ギリシャ神話に出てくるようなローブを身にまとい、頭には植物の花冠をして遠くを見つめている。
ところが、1900年以降 になると、商業ポスターが出てくるようになります。それでもこのあたりはまだまだ色合いも暗く、絵画的なものも多いのですが、徐々に「広告」へと変わっていきます。例えば、アルベルト・ヴァイスゲルバーの「ゲルラハ児童文庫、極めつけの本を子供たちに!美麗挿画多数!オリジナル装丁!」、ルートヴィヒ・ホールヴァインの「カール・シュティラー・ジュニア靴店」「メルツェデス、ダイムラー児童会社」などなど。
この頃のもので「ポスター愛好家協会」のポスターがあるんですが、下の写真の左のものです。(これは後で買ったポストカードの写真)
よーく見ていただくとわかるんですが、女性が眼鏡のようなものでポスターをみています。これは「ポスター愛好家協会」のどのポスターにも必ず出てくるシンボルのようなもので、個人的にはすごく気に入りました。えーとちなみに右のはオットー・アルプケ「IPA 、国際毛皮製品博覧会 ライプツィヒ」(1930)です。
これは、エントランス正面にある太い柱。様々なドイツポスターが貼られてました。 この一番上の「靴」のポスターはルツィアン・ベルンハルトの「シュティラー靴店」(1908年)。絵画的なポスターから、「即物的ポスター(ザッハプラカート)」へと変わりつつある時代の代表的作家のものです。
で、このフライヤーにもなっていた大きな目のポスター↓は、フランツ・フォン・シュトゥックの「国際衛生博覧会」(ドレスデン/1911年)のもの。実は、 これは1930年の「国際衛生博覧会」(ドレスデン/1930年)にも作られており、この時はヴィリー・ヴェッツォルトが作成しています。 この時代のものとはやはりちょっと違う。
その後、1914年以降、ドイツは世界第一次世界大戦に突入。ポスターも戦時下ゆえ商業的なポスターはほとんどなくなります。ただ、ドイツではこの時期のフランスやイギリスのポスターとは違い、敵国を貶めるポスターはほとんどなく、むしろ自国民へ向けてのメッセージ性の強いポスターだった、というのがとても印象深かったです。
この頃のポスターには「戦争公債応募の締切は10月18日木曜日昼1時です」とか「戦争公債応募こそ、私への最良の誕生日の贈り物です!」「代用肉エキス、プラントックス」「梳いた女性の髪を集めています!」などがあり、時勢が色濃く表れておりイラストも暗く、当時のドイツがどのような状態だったかをうかがい知ることが出来るでしょう。
その後、戦争が終わると今度は政治ポスターが多くなり、いよいよドイツ黄金の20年代がやってきます。この時代のポスターは華やかで、ユーモアにあふれ、ヴィヴィッドな色彩ととにかく美しく鮮やか。「州立バウハウス展」「北欧週間、リューベック」「春夏秋、ロイド旅行、地中海へ」と商業ポスター全盛期。これを見るためにドイツポスター展に来る価値はあります。
そして4Fで開催されていたのが、日本にみるドイツ近代ポスター。「カルピス」の国際懸賞広告や、「六人組」、杉浦非水を中心とした「七人社」の活動を見ることが出来ます。特にカルピス国際懸賞広告はなじみのある商品なだけに、当時ドイツでどのように受け止められ、それをドイツデザイナーがどんな風に自分のものにしてデザインしたかを見てとることが出来、大変面白かった。
ドイツポスター展の会期は、3/30(日)までです。ぜひとも行ってみてください。
【関連サイト】
Mucha-holic / ミュシャ中毒 ドイツ・ポスター1890–1933
拾遺集/pick ‘n’ pin up : 「ドイツ・ポスター 1890-1933」展
ドイツ・ポスター 1890-1933 PLAKATE – maaolaの旅日記
daily report 毎日のこと | ドイツ・ポスター 1890-1933(京都国立近代美術館)
京都国立近代美術館 | The National Museum of Modern Art, Kyoto(オフィシャルサイト)
住所/京都府京都市左京区岡崎円勝寺町
TEL/075-761-4111
観覧時間/午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日/毎週月曜日
こんにちは。ミュシャ中毒のIraです。
リンクされているのに今さら気付いてコメントに来ました。
ピンクのフライヤーですが、下の方に「会場までのお出かけはJRが便利です」
と書いてあるので、たぶんJR専用のものだと思います。
鉄道会社の宣伝入りのフライヤーはときどき見ますけど、
デザインを変えて作るのはめったにないんじゃないかと思います。
そらさんのチケットはこれまた同デザインの色違いなんですね。
私が買った前売り券はポスターと同じ黒地にオレンジでした。
チケットにも色んなパターンがあるんですね。
ポスターも何種類か作ってるみたいですし、凝ってますよねー。
「ポスター愛好家協会」のシンボルは私も気に入りました。