本日、11/10河出書房新社から、新しい「世界文学全集」が発売されました。第一回の配本はジャック・ケルアックの「路上/オン・ザ・ロード」青山南訳。この全集の選者が…ご存じ「池澤夏樹」氏です。(芥川賞作家であり、その受賞作が「スティル・ライフ」。その冷たい氷のような透明感のある文章を読んで、好きになった作家)
その彼の全集宣言がとても素晴らしかったので、ここに全文転載させていただきます。
世界文学全集 宣言
人が一人では生きていけないように、文学は一冊では成立しない。
一冊の本の背後にはたくさんの本がある。本を読むというのは、実はそれまでに読んだ本を思い出す行為だ。新鮮でいて懐かしい。
そのために、「文学全集」と呼ばれる教養のシステムがかつてあった。それをもう一度作ろうとぼくは考えた。
三か月で消えるベストセラーではなく、心の中に十年二十年残る読書体験。
その一方で、それは明日につながる世界文学の見本市、作家を目指す若い人々のための支援キットでなければならない。敢えて古典を外し、もっぱら二十世紀後半から名作を選んだのはそのためだ。
世界はこんなに広いし、人間の思いはこんなに遠くまで飛翔する。
それを体験してほしい。池澤夏樹
実際にここにあげられているどれも私は読んだことがないというのは情けない話です。しっかし、全集って高いなぁ!うちにもありましたよ、全集。黒と金の装飾の全集が。どこいったっけ。
全集と聞くと、いつも思い出す一冊の小説が私にはあって…
それは北村薫の「六の宮の姫君」。私が彼の著作の中で「スキップ」「空飛ぶ馬」の次ぐらいに好きな一冊かもしれない。実際に彼が書いた論文を元にしているらしい、この小説。芥川龍之介の「六の宮の姫君」と、菊池寛との玉突きの謎をといていく話なんですが…その中に主人公「私」があるペンションで一冊の全集を見つける。
全集のラインナップを見ていると時の経つのを忘れる。誰のどういう作品が選ばれているかを見ながら、自分だったらこちらを採る、などと考えるのが楽しい。そういう意味からは、各巻の<選択>をした人が分かるといい。文学全集なら表向きの編集委員はいても、大体は編集部編ということになるのだろう。しかし、作品を選び選ばれるということは突き詰めれば個性と個性のぶつかり合いであり、愛の表現であるはずだ。
これを読んだとき、あぁ、全集ってそういうもんなんだ!と目から鱗でしたね。それまで全集の何がいいのか全然わかんなかったんですけど。
あと、本読みHPブログ: 池澤夏樹の世界文学全集で、なかなか興味深い作家による全集のアイデアが出されてて笑った。
各出版社は傍観してないで、河出書房新社の池澤夏樹版文学全集に真っ向から対決してはどうであるか。たとえば‥‥
講談社:村上春樹個人編集・安西水丸デザイン「世界文学全集」
集英社:島田雅彦/高橋源一郎/山田詠美共同編集「新しい世界文学全集」
講談社:「ドラゴン桜」の三田紀房監修「東大に入るための世界文学全集」
幻冬舎:村上龍責任編集「13歳の世界文学全集」
新潮社:北村薫個人編集・高野文子装画「少年少女のための世界文学全集」
筑摩書房:クラフト=エヴィング商會装丁「世界文学全集の森」
本の雑誌社:椎名誠/目黒孝二編集・沢野ひとし画「世界どかどか文学全集」
太田出版:東浩紀ほか編・ばらスィーほか画「萌える世界文学全集」そうして、「えーっ、今月は、集英社版も本の雑誌社版もブッツァーティの『タタール人の砂漠』なの! わー、集英社版は装画が鳥山明だ! わー、でも本の雑誌社版の椎名誠の砂漠写真もいい!」というようなことになれば、それなりに話題になって、盛り上がると思います。
なかなか、というか、かなり面白い。ちゃんとそれを出してくれそうな出版社が選ばれているところもミソですね。どれもこれも興味深い。村上春樹のは絶対買うなぁ、北村薫さんのも読んでみたい、クラフト・エヴィングはどうなるのか想像もつかない、本の雑誌社は…まぁある意味ネタで。(笑)
これは盛り上がりますよ、ええ。
あと、本読みHPブログ: 池澤夏樹個人編集「世界文学全集」に対抗するで、なぜ対抗しているのかよくわからないが(笑)、「日本文学全集」が出来ちゃってます。素晴らしい仕事ぶり。面白いなー。
河出書房新社 (2007/09/09)
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中央公論社 (1991/12)
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佐々井とは誰か
たとえば、星を見るとかして…
うーん
東京創元社 (1999/06)
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本好きな人必見!異色のミステリー♪
菊池寛が読みたくなる。
すばらしい、書誌学ミステリ
私も「スキップ」が一番好きです。あと「街の灯り」も好き。
「空飛ぶ馬」から一年一年成長していく「私」が好ましく、
「六の宮の姫君」は、難しくて適当に読んだから、全集のくだりは何も覚えてない…。
作家さんが、時間をかけて、言葉を選んで書かれたものを、適当に読むなんて、もったいないですよね。
難しい本を読むと、少しかしこくなった気がするアホですが、
もう一度読みかえしてみようっと。