京都の普通の家庭で作られるお惣菜のことを「おばんざい」といいます。元々は普通に「おかず」と言っていたそうですが、昭和40年頃に朝日新聞が「おばんざい」というタイトルでコラムを執筆したことから、徐々に浸透していき、今では京都でランチといえば、おばんざい、というぐらい定着しています。
基本的におばんざいは煮炊きしたものが多く、シンプルでこったものではないのが特徴。ヘルシーなこともあって女性を中心に人気があるのもうなずけます。ところが、京都にはよく行くのに、実は私「おばんざい」は数えるほどしか食べたことがありません。人気店は観光客が多く待ち時間を考えると、つい避けてしまっていました。
この日は、滋賀の友人であるM氏と会食の予定だったので、ちょっとゆっくり落ち着いて喋れるところで、彼はあまり京都には訪れない、といっていたので京都らしい食事を、と考えて、繁華街から少し離れたここなら平日ということもありそれほど混んでいないだろう、と「光泉洞寿み」を訪れることにしました。築100年の町家を改装しただけあって、二階の天井が低い厨子二階で、虫籠窓(むしこまど)がいかにも京町家らしい佇まい。かかっている看板などは昔のまま残されています。
入るとまず大テーブルがあり、上がり框から座敷へと案内され座ると、雪見障子を通してちょうど坪庭が見えてふっと肩の力が抜けました。ほどなく出されたお茶は、京都を代表するお茶屋である一保堂の番茶。その香ばしさに、急にお腹がすいてきます。
日替わり定食(1,010円)もありましたが、生麩がとても美味しいと評判だったので「生麩定食」(1,850円)に決定。
日替わり定食に、生麩田楽と季節の自家製パウンドケーキがついてくるセットです。この日の日替わりは鯛の煮付、おひたし、冷奴、お味噌汁、そして抹茶のパウンドケーキ。
この生麩は京都錦市場にある「麩嘉」の生麩。口の中にいれるともっちもち!弾力がありつつもしっかりコシがあって、これに甘い味噌をつけて食べると絶妙!よもぎ田楽はほろ苦い風味があとから優しく広がって、これまた美味!くせになる味。
これは絶対食べてほしい一品。日替わり定食のメニューと変わりはないけれど、これは食べる価値ありです。
もちろん煮付けも、ほろりと身が崩れてよく煮汁がしみてて、上品な白身の風味を損なわない優しい味付け。この皮と身の間のゼラチンが一番美味しいんです。
まるでここだけ時がゆるやかに流れているような、そんな穏やかな時間を過ごすことができて満足。観光客向け、というよりは近くの職場で働いている方たちの御用達なのかもしれません(ランチ回数券の販売もありました)。
ここはランチ営業のみ。四条通からだと少し歩きますが、落ち着いて喋りながら食事するにはぴったりのお店だと思います。
【店舗情報】
店名/京町屋お昼処 光泉洞寿み
住所/京都府京都市中京区姉小路堺町東入ル2軒目南大阪材木町686-2
TEL/075-241-7377
定休日/日曜・祝日不定休
営業時間/11:30~15:30
さて、M氏からは北海道のお土産をいただいてしまって恐縮。つい最近独立したばかりの彼のサイトを見せてもらってちょろちょろっとアドバイスしただけなのに、お礼だから、と言われちゃうとね。(苦笑)いやーすみません!美味しくいただきました。ごちそうさま。