彼と一緒にいると、私はよく泣いた。
自分でもよくわからぬまま。
悲しかったわけじゃないし、
辛かったわけでもない。
ただ彼のそばにいるのがひどく息苦しくて、
それでも息が出来ぬほど抱きしめてほしいと願った。
訝しげにのぞきこむ彼に
小さくかぶりをふり、何でもないよ、と私は少しだけ笑って、
きつく彼を抱きしめると、
苦笑いをしながら、何も聞かずに抱きしめてくれたから
私はまた少し泣けて…。
そんな風に私たちの周りには
いつだってどうしようもないほどの
絶望感と別れの予感が満ちていたのだ。
それは、もう終わった恋の話。
ただ、時々思い出してため息をつきたくなる夜もある。
それだけの話。