また一つ歳をとった。ただし、29歳から30歳になった時のように自分の中で大きな区切りがあるわけでもなく、淡々と歳をとったな、と感じただけだった。
けれども、世間の見方からすると、どうやら私はすでにアラウンドサーティではなくなっており、今度はアラウンドフォーティという箱に詰め替えるべく、自動的にベルトコンベヤーに載せられてゴトゴトと運ばれていくのだった。ゴトリ、パタン。
普段なら0時を過ぎると、早く寝よう、と急かす夫が、この日だけは特別とばかりに、私の好きな紅茶を淹れるためティファールのポットに浄水器の水をセットする。
そうして、毎年「1」ずつ増えていく数字をケーキにさし、新婚旅行で行ったハンガリーのマッチ(何度刷ってもなかなかつかないマッチ)で火をつけ、照れくさそうに誕生日の歌を歌ってくれるのを少し面白そうに私が見つめている。
トゥーユゥと唇をすぼめる彼に、ありがとう、と私は言って、ふぅっとろうそくに息をふきかけると一瞬部屋が闇に包まれて何も見えない。
手探りで電灯をつけ、こんな時間に食べたら太っちゃうね、と苦笑しつつ、二人でケーキを半分ずつ食べて、少し傾いたケーキが倒れないようにそっとお皿を交換する。
そうして2つのケーキを当たり前のように半分ずつシェアするように。この先も彼と色んなものをシェアしていくんだろう。おそらくは。
そういえば、帰宅後、背後に隠しながらそっと冷蔵庫に入れるのはいいのだけれど、0時まで冷蔵庫を開けないで、には参ったな。すでに夕食を作り終えた後なのでまだ良かったけれど。気を使ってできるだけ中を見ないように扉を開けたりしていたら、思わず吹き出してしまった。
約束どおり、花束も買ってきてくれた。彼自身が1つずつ選んでくれたらしい。
きっと真剣な顔をして、一生懸命選んでくれたんだろうと花を見るたびに想像してくすりと笑ってしまう、そんな35の春。
☆おめでとうございます☆
微笑ましい情景が目に浮かび ゆったりした時間の流れが見えたような気がしました。
急に 熊木杏里の「誕生日」という歌を歌ってみたくなりました。
御存知ですか?夕方のTV番組で、今日産まれた赤ちゃんの家族をとりあげるコーナーで流れるんです。
そのコーナーは、家族が待ち望んでいた誕生をやっと迎えられた喜びがあふれてるんです。
きっと35年前のそらさんのお宅でも、そんな風景がみられたんだろうなぁと思ったこねこでした♬